certified random orderによる著者名の並べ方


AER(American Economic Review)という雑誌に掲載された以下の「Ray ⓡ Robson (2018)」という論文の内容についての話です(著者名の区切に「ⓡ」という記号を使っている理由はあとで説明します)。

Ray, Debraj ⓡ Arthur Robson (2018) "Certified Random: A New Order for Coauthorship," American Economic Review, Vol. 108, No. 2, pp. 489–520, DOI: 10.1257/aer.20161492.

論文等を共著で書いたときには、著者名をどういう順番で並べるかを選ぶ必要があります。分野によっても変わってくるかと思いますが、よく使われる方法には、1) 論文の執筆における貢献の大きさ順で並べるという方法、2) アルファベット順で並べるという方法(今は話を英語の論文に限定しています)があると思います。

アルファベット順

論文の執筆の貢献度が著者の間でかなり違う場合には貢献度順が使われることが多いのでしょうが、貢献度が同じような場合にはアルファベット順が多いかもしれません。実際、経済学ではアルファベット順の利用がかなり多いようです。ただ、アルファベット順には大きな欠点があります。それはたまたまアルファベットの若い名前を持つ人を大きく優遇することになるという点です。

実際にどれくらい優遇することになるかはRay ⓡ Robson (2018)でも説明されています。Ray ⓡ Robson (2018)では以下の論文が紹介されています。

Einav, Liran, and Leeat Yariv. (2006) "What's in a Surname? The Effects of Surname Initials on Academic Success." Journal of Economic Perspectives, 20 (1), pp.175–88, DOI: 10.1257/089533006776526085.

このEinav and Yariv (2006)は、米国のトップ35の経済学部の教員を対象に、名前と業績の関係について調査、分析したものだそうです。分析の結果、若いアルファベットの姓を持つ教員ほどトップ10の経済学部におけるテニュアを得る可能性が優位に高く、クラークメダルとノーベル賞を受賞する確率も高いということがわかったそうです(これは、出身国、人種、宗教、学部等の要素をコントロールした上で導かれた結果です)。他にも証拠となるようなデータがあるようです(詳しくはRay ⓡ Robson (2018)を見てください)。

[注]ただし、上記の研究に反論するような研究もあります。例えば、以下 の論文は、アルファベット順による第一著者優遇の効果は従来言われているほどには大き くはないという結果を導いています。

Ong, D., Chan, H. F., Torgler, B., and Yang, Y. (2018). "Collaboration incentives: Endogenous selection into single and coauthorships by surname initial in economics and management." Journal of Economic Behavior and Organization, 147, pp.41–57. 10.1016/j.jebo.2018.01.001

ランダム順

アルファベット順では名前によって有利、不利が生じてしまうということなので、それではランダムに順番を決めてやればいいのではとなります。例えば、Abeさん、koizumiさんという2人がよく共同論文を書いていて、論文を書くたびにサイコロを振って著者名の順序を決めたとすると、Abeさんが特に優遇されるというようなことはなくなりそうです。

しかし、ランダムな並べ方には一つ問題があります。それは、仮にランダムに決めた結果として「Koizumi and Abe」という順番になったときでも、それをKoizumiさんが論文の執筆において大きい貢献をしたために第一著者になっているとみなしてしまう人が出てくるという点です。そうなると逆にKoizumiさんを優遇することになってしまいそうです。

最初に述べたように、並べ方としては貢献順という方法もよく使われています。著者自身はランダムに並べた結果「Koizumi and Abe」としている場合であっても、第三者からはそれがランダム順なのか、貢献順なのかが判断できません。

Certified random order(認証されたランダム順)

以上のように単純なランダム順では問題があるということで、Ray ⓡ Robson (2018)で提案されているのが「certified random order」というランダム順です。単純なランダムと何が違うかというと、ランダムで著者順を決めているということがわかるように特別な記号(区切)を利用するということです。上の例で言えば、「Koizumi and Abe」ではなく、「Koizumi ⓡ Abe」というように表現するということです。

単に「Koizumi and Abe」なら、Koizumiさんが貢献度が大きいのかと思う人がでてきますが、「Koizumi ⓡ Abe」のようにこれは「ランダム順」ということを示す記号を用いれば、貢献順と誤解されることはなくなり、本当の意味でのランダム順ということを明示することができます。

「論文の著者が保証(certify)したランダム(これはランダムに決めた並び順と著者によって保証されている)」ということで「certified random order」という呼び方を使っているようです。ランダムということを表す記号としてはどういうものでもよいようですのですが、Ray ⓡ Robson (2018)では「®」を使っています。ただ、これは既に商標のマークとして使われていますので、Ray は代わりに「ⓡ」を提案しています。そのため、この文章でも「ⓡ」を使っています。ただし、ⓡを使うべきといういわけではなく、別のものでもよいと思います(できるだけ統一していた方がわかりやすいですが)。とりあえず考え方を説明するだけでしたら、「and」で区切るのでなければ何でもいいかと思います。

「certified random order」という方法はいろいろ良い性質を持つようです。それをRay ⓡ Robson (2018)で長々と証明をしています(私にはよくわからないので、詳しくは論文を見てください)。

一つ誤解を招きやすい点ですが、randomに並べるというのは、引用するたびにランダムに著者名を並べ替えるということではないです。元々、著者達が決めた並び順で常に引用するのですが、その元の並び順を著者は(貢献順等ではなく)ランダムな方法で決めましたよということです。一度、著者が決めた並び順は固定されます。

certified random orderの実装

なぜ certified random order の話をしたのかというと、certified random orderをBibTeX で実現できないかと Raraj Ray と Martin Osborneに聞かれたからです(Raraj Rayは上記の論文の著者であり、Martin Osborneは有名なゲーム理論のテキストの著者ですね)。それほど難しいことではなかったので、https://github.com/ShiroTakeda/econ-bstというページで開発している econ.bst というBibTeXのスタイルファイルで certified random orderを使えるようにしました。

Certified random orderを使う方法ですが(詳しくはecon.bstのマニュアルを読んでもらいたいのですが)、データベース(bibファイル)でcertified random orderを使っていることを指定するという方法にしています。具体的には、certified random orderを利用している文献については、「nameorder」というフィールドに「random」という値を 設定するという方法をとっています。例えば、以下のような指定をします。

@techreport{NBERw25205,
  title        = {Electoral Systems and Inequalities in Government
                  Interventions},
  author       = {Garance Genicot and Laurent Bouton and Micael Castanheira},
  institution  = {National Bureau of Economic Research},
  type         = {Working Paper},
  series       = {Working Paper Series},
  number       = 25205,
  year         = 2018,
  month        = {October},
  doi          = {10.3386/w25205},
  URL          = {http://www.nber.org/papers/w25205},
  nameorder    = {random}
}

このように指定された文献を引用すると、参考文献部分で

Genicot, Garance ⓡ Laurent Bouton ⓡ Micael Castanheira (2018) "Electoral Systems and In- equalities in Government Interventions," Working Paper 25205, National Bureau of Economic Research, URL: http://www.nber.org/papers/w25205, DOI: 10.3386/w25205.

というような表記になり、さらに引用部分では「Genicot ⓡ Bouton ⓡ Castanheira (2018)」、あるいは「Genicot ⓡ al.(2018)」という形になります。後者のような省略形の場合、「et」の代わりに「ⓡ」を使っています(etはラテン語でandの意味なので)。「author」フィールドの指定は通常の方法と変わりません。

certified random orderの今後

このcertified random orderという表記の方法が今後普及するかどうかはわかりません。ただ、普及させるには文献データベース側での対応が必要になると思います。具体的には、文献のデータベース側でその論文の著者名の並び方がcertified random orderなのかどうかを示す情報を持つようにしないといけないと思います。例えば、私がecon.bstで実装したように、bibファイルにおいてnameorderというフィールドにrandomという値を持たせるというようにです。

現在、ネット(例えば、Google scholarやIDEAS)などでBibTeX形式の文献情報を得ることができますが、それらのデータベースの論文においてcertified random orderが使われているのかどうかという情報は含まれていません。例えば、「これ」はGoogle Scholarから取得できる「Ray ⓡ Robson (2018)」のBibTeX形式の文献情報ですが、certified random orderを使っているという情報は全く含まれていません。情報がなければ引用する際にcertified random orderの表記を使うべきかどうかもそもそもわかりません。まずは引用する側がその文献がcertified random orderを使っているかを簡単に判断できるようにデータベース側が対応する必要があると思います。

以上、certified random orderについて説明しましたが、普段、アルファベット順で著者名を並べているという人、その中でも特に姓のアルファベットが後ろの方なのでいつも第一著者にはなれていないという人は「certified random order」を使うように共著者に提案してみるといいかもしれません。有名な研究者が使うようになれば、多くの人が使うようになるかもしれないですね。私自身はたぶん使う機会がなさそうです...というのは、私は元々アルファベット順で著者名を並べることがほとんどないもので。


econ.bstのCTANへの追加


「この場所」でecon.bstというBibTeXのスタイルファイルを作成・配布しています。これは主に経済学のジャーナル向けのスタイルです。ただし、特定のジャーナル向けというわけではなく、自分で簡単にカスタマイズできるということを特徴にしています。このecon.bstをCTANに追加してもらいました。

https://ctan.org/pkg/econ-bst

これでecon.bstはTeX Liveの中にも追加されることになりますので、TeX Liveを使っている人でしたら自分でインストールしなくても利用できるようになります。

上述のように、econ.bstは元々特定のジャーナル用のものではなく、自分でBibTeXのスタイルをカスタマイズしたい人向けのものです。そのままのbstファイルとして利用するのではなく、自分で書き換えて利用することを前提としています。ですので、TeXの標準的なディストリビューションに含むのではなく、自分でダウンロードして(さらに、自分で書き換えて)利用するという形がいいのではないかと思っていました。ですが、普通のTeXのシステムで最初から利用できるようにして欲しいという要望がありましたので、今回CTAN に追加することにしました。

また、CTANへの追加とは別なのですが、econ.bstで「certified random order」という著者名の表記方法ができるようにしました。これについては別のポスト(「certified random orderによる著者名の並べ方」)で説明したいと思います。

日本語文献も扱える jecon.bst というスタイルファイルも作成していますが、これについては今のところCTANへは追加していないです。こちらも自分でカスタマイズして使うものなので、自分でインストールして使うのでいいかと思いますが、econ.bstと同様にCTANに追加してもらうことも考えています。


『環境経済・政策学事典』


丸善出版から『環境経済・政策学事典』という書籍が出版されました。環境経済・政策学会が編集者としてまとめた環境経済学、環境政策に関する事典です。


一つの項目について、2ページから4ページで解説するというスタイルです。あるトピックについて、基本的な概念などを説明するとともに、参考文献や今後の研究課題も含めた形で最新の研究の動向も解説していますから、環境経済学・政策学の何らかのトピックについて学びたいという場合に非常に役に立つ事典になっているかと思います。

私自身も「二重の配当」、「カーボンリーケージ」という二つの項目について担当しています。

書籍としてはかなり高いので誰でも気軽に購入できるものではないですが、研究者でしたら高い値段に見合う価値はあると思いますし、大学の図書館には入るでしょうから購入しないにしても環境経済学について何か勉強するときにはまず見てみるといいと思います。


Windowsでのゴシックフォントと明朝フォントの区別


前からずっと思っていたことですが、WindowsでMS Word(マイクロソフト・ワード)を使っているとき明朝フォントとゴシックフォントが画面上ではすごく区別しにくいです。特に、「MS明朝」と「MSゴシック」は区別がつきにくいです。

↓の画像はMS Wordで書いている文書をキャプチャしたものです。上側は「MS明朝+MSゴシック」で書いたもの、下側は「游明朝+游ゴシック Medium」で書いたものです。

上側の「MS明朝+MSゴシック」で記述したものの場合、明朝フォントとゴシックフォントの区別がしにくく、どの部分にゴシック体を利用しているかが非常にわかりにくいと思います。

このWordファイルをPDFファイルへ出力し、それをAdobe Readerで表示したものをキャプチャしたものが↓の画像です。

これを見ればわかるようにPDFに直した後ならMS明朝とMSゴシックは簡単に区別できるようになります。また、Wordの文書を紙に印刷したあとも同じように二つのフォントの区別は簡単です。区別しにくいのはWordで書いている際に、それを画面上で見るときです。


私はよく授業で学生にレポートやレジュメをWordで作成させますが、学生が作成した文書では本来明朝体で書くべきような部分(見出しなどではない普通の文など)にゴシック体を利用していることが非常によくあります。一つの理由は学生がフォントの使い分けにしっかり注意を払っていないということだと思います。そもそもレポートの本文を全部ゴシック体で書くのは不適切ということを知らない学生もいますし。ただそれだけではなく、上で述べた「画面上でMS明朝、MSゴシックの区別が付きにくい」ということも大きな原因になっていると思います。というのは、学生も印刷した場合には何かおかしいフォントを使っているということに気付くからです。

印刷すれば確認しやすくなりますから、印刷するというのも一つの対処方法ですが、フォントのチェックのためだけに印刷するのも面倒ですし、紙ももったいないですし、今はレポートやレジュメもオンラインでファイルで提出ということも多いですので、やはり印刷せずに画面上だけで簡単に確認できると便利です。この部分を改善してもらいたいとずっと思っているのですが、Windowsではかなり前からMS明朝フォント、MSゴシックフォントが使われているにもかかわらず、ずっと同じままなので今後も変わらない気がします。


「MS明朝フォント」、「MSゴシックフォント」の組み合わせでは判別しにくいということなので、異なったフォントを利用するという対処方法もあります。最近のWindowsではMS明朝、MSゴシックに加えて、游明朝、游ゴシックというフォントも標準的に含まれるようになりました。上の画像には「游明朝+游ゴシック」という組み合せを利用した場合も含まれていますが、「游明朝+游ゴシック」の方は「MS明朝+MSゴシック」よりも画面上でも若干区別がつきやすいと思います。

ただ、「游明朝+游ゴシック」の組み合わせは、PDFファイルにしたり、印刷した場合には逆に区別しにくくなるようです...


フォントの見た目は個々人の好みに大きく依存することなので、フォントがどうあるべきかということに単純な解はないと思います。ただ、上で説明したように、明朝体を使うべき部分にゴシック体を誤って利用しているケースが非常によく見られますから(すくなくとも私の学生では)、もう少し画面上で両者を区別しやすくしてくれるとありがたいです。


GAMS Studio


2018年4月11日に GAMS の 25.1.0 の Betaバージョンがリリースされました。

https://www.gams.com/beta/

その 25.1.0 Beta から「GAMS Studio」というIDE(統合開発環境)が提供されるようになりました。GAMS Studioの詳しい説明は「こちらのページ」にあります。



これまでのGAMSにも「GAMS IDE」というIDEが付属していましたが、機能が非常に貧弱で他のプログラミング言語用のIDEに比べてかなり不便なものでした。

このリリースから新しい IDE である「GAMS Studio」が提供されるようになりました。GAMS Studioは昨年から開発が始まったもので、まだ開発途中のものなので、いろいろ不完全な部分も現時点ではあります。ですので、快適に利用できるという水準にはまだ達していないのですが、既にGAMS IDEより便利になっている部分もあります。今後、だんだん開発が進むと思うので、将来的にはかなり期待できそうです。

GAMS StudioはGitHub上(https://github.com/GAMS-dev/studio)でソースコードが公開されていますので、自分で修正したり、開発に参加したりすることも可能のようです。

以前にGMS-ManagerというGAMS用のIDEを紹介しましたが、あれはGAMS本体に付属の公式のものではなく、外部の人が作成しているものです。現時点ではGMS-Managerの方が完成度が高く、便利だと思いますが、GAMS StudioはGAMSに付属しているもの(一方、GMS-Managerは有料)ですし、開発がどんどん進めば同じような水準のものになるかもしれません。それぞれ一長一短がありどちらがよいとは言えませんが、とりあえず選択肢が広がるのはユーザーにはいいことだと思います。

GAMS Studioを紹介しましたが、私自身はEmacsというエディターでGAMSのコードを書い(たり、実行したりし)ています。EmacsがGAMSを使うためのマクロを自分自身で作成しています。「GAMS mode for Emacs」というものです。

Emacs のプログラム編集の機能はやはりすごく充実していますし、もう20年も利用しているエディターですので、私自身は当分 Emacs で GAMS を使うことになると思います。


gams-ac.elのリリース


Emacs には auto-completeモードというものがあります。プログラミングにおいて命令などの候補を表示させるための機能です。

下のようなものです。この例では「eq」まで打ったところで、「equation」などの候補が表示されています。

プログラム言語によって命令が異なりますから、候補として出すべき命令も異なります。そのため、auto-completeモードでは自分で新たな言語用の設定を追加することができます。

gams-ac.el というのはGAMS mode上でauto-completeを利用するためのマクロです。単にGAMS mode 用に候補を追加するだけです。「このページ」で提供しています。

本当は GAMS modeのレポジトリに含めて配布しようと思っていたのですが、melpa に gams-ac.el を追加しようとしたら、gams-ac.el はauto-complete に依存するマクロだから別扱いにしたほうがよいと言われたので、gams-ac.el 用のレポジトリを別に作成しました。もうすぐ melpa にも追加されると思うので、melpaからインストールできるようになると思います。


中国の清華大学


3月の初めに中国・北京の清華大学に行ってきました。日本・中国の温暖化対策に関するワークショップに参加するためです。中国(北京)の感想をいくつか書きます。

□ 清華大学

うちの大学のそばにも精華大学があるのですが、字が違います(し、中身も全然違います)。昔、清朝の時代の庭園があった場所に作られたそうです。それもあって、きれいな場所です。学生はみな敷地内の寮に住んでいて、寮もたくさんあるので、とても広いです。ホテルが大学の敷地内にあり、それに泊まりました。以前に北京の近くの大学(中国地質大学)に来たときも、上海の大学(華東師範大学)に行った時も、大学内にホテルがあり、そこに泊まりました。大学内にホテルがあると便利でいいです。

清華大学 P3120577 清華大学 P3130745

□ 電動のバイク

ガソリンのバイクはほとんど走っていなくて、電動のバイクばかり走っていました。安全性の面から北京ではガソリンのバイクは規制されているそうです。大学の敷地内も道路が通っているので、バイクが多いのですが、電動のバイクは全然音がしないのにスピードはすごく速いのでおっかないです。むしろ事故が増えそうな気もします。

バイクは寒いせいか、防寒具を着てのっている人が多いです。下の写真のようなものです。ちょっと見た目がいまいちですが、これなら暖いですね。

清華大学 P3110363 清華大学 P3110364

□ 大気汚染

中国は冬の大気汚染が有名です。最近、大気汚染対策に力を入れるようになり、それもあり北京では大気汚染がかなり改善されたというニュースを日本にいるときに見ました。実際のところどうだったかというと、以前よりはずっと改善したそうですが、まだ完全になくなったわけではないです。天気や風向きなどで変わるようですが、1日目、2日目を除いて空気は悪く、遠くはかすんでいて全然見えませんでした。北京の人は慣れてしまっているせいか、ほとんどマスクをしていないですが、のどが弱い人ならマスクしないとだめだと思いますし、人によっては気分が悪くなったりすると思います。私はマスクしていなくても平気でしたが。

下の写真は朝の写真ですが、曇っていて遠くが見えないです。

北京 P3130691

これは夕方

清華大学 P3130752

北京空港。遠くが見えないです。

北京空港 P3140918

夜。空が赤いです。

清華大学 P3120617

□ 電子マネー

中国の若い人たちの多くは支払いに電子マネーを利用しているようです。大学の学食でも支払いは電子マネーのみ対応というところが多かったです。ホテルのロビーの自動販売機のコーヒーが飲みたかったのですが、これも電子マネーのみ対応なので飲めませんでした。

清華大学 P3110385

電子マネーが普及しているのは、便利ということもあるでしょうが、偽札の防止という理由も大きいようです。私はどの店でも現金しか使わなかったのですが、100元などの大きい札を渡すと透かしをチェックしたりして偽札かどうかチェックされることが多かったです。

電子マネーといっても、日本のスイカやエディのように事前にチャージしておくタイプのものとは違い、使った時点ですぐに銀行口座から引き落される仕組みのようです。WeChatPayやAlipayというものだそうです。私も使ってみたかったのですが、中国の銀行口座を持っていないと登録できないようなので、日本人の短期滞在者が使うのは難しそうです。とにかくなんでもスマホで支払いするので、スマホを失くしたらかなり困ると中国人は言っていました。

□ セキュリティーチェック

あちこちでセキュリティーチェックが厳しかったです。地下鉄に乗るときもチェックされます。ラッシュアワーのときにはすごい混雑になりそうです。

□ ネットのサービス全般

中国では使えないネットのサービスが多いです。例えば、以下のサービスが利用できません(アクセスできません)

  • Google関係は全部
  • Facebook
  • Twitter
  • Dropbox
  • Yahoo Japanの検索

私は日本では普段 Google のサービスや Dropbox を常用しているのでこれはかなり困ります。スマホも Android なので、普段利用しているアプリで使えないものが多いです。日本にいるときにはあまり意識していませんが、普段いかに Google に依存した生活になっているかを実感しました。

Apple のサービスは規制されていないようなので、iPhone 使いの人は被害が少ないと思います(メールや地図が問題なく利用できるようです)。

□ 検索サービス

普段なんでも Google で検索しているので、Google の検索が使えないとなるとかなり不便に感じます。Yahoo Japanの検索も利用できないです。ですので、使える検索というと「マイクロソフトの Bing」 や「中国の百度(Baidu)」ということなります。ただ、この二つと Google の検索は大きく違います。

Bing は日本語のページの検索もできますが、普通に検索すると中国語のページばかり結果に表示されます(中国版になってしまうようです)。百度についてはページ内の説明なども全部中国語ですし、検索結果に日本語のページがほとんど出てこないので、これも日本のページの検索には不便です。中国語のページを検索するのなら、百度で全然問題ないと思います(もちろん、検閲により見えないページもあると思いますが)。

ちなみに、百度で「武田史郎」で検索すると、日本の RIETI のページが出てきます。なぜ、RIETI のページが出るのかと思ったら、RIET は中国語のページも作成していて、私の論文がそこに置いてあるからです。「貿易政策を対象とした応用一般均衡分析」というタイトルは中国語では「以贸易政策为对象的应用一般均衡分析」となるようです。ただ、日本語の論文なので、タイトルだけ中国語にしても結局読めないと思いますが。なぜわざわざ中国語のページを作成しているのでしょう?

Androidのスマホで百度のアプリを利用するのなら、日本にいるときにインストールしておく方がいいです。中国では Google Play にアクセスできないので(中国人はどうやってインストールしているのでしょう? 不思議です)

□ 翻訳サービス

翻訳のサービスも普段は Google 翻訳を利用していますが、使えません。翻訳については百度の翻訳がそれなりに使えます。ただし、「日←→中」の翻訳はあまり精度が高くないです。「英←→中」だとかなり正確に翻訳できるようなので、英語がわかるのなら「英←→中」を使うほうがいいかもしれません。

□ 地図

中国で使うのなら百度の地図はかなり便利だと思います。ただし、百度の地図では表示や入力が基本的に中国語になるので、少しは中国語がわからないと使えないと思い ます。

□ 無料のwifi

お店、喫茶店など無料の wifi を提供しているところが多いのですが、その際の認証に WeiBo(微博)や WeChat などを利用しているところがありました。無料の wifi を利用したいのなら日本にいるときに Weibo や WeChat に登録し、アプリを入れておくといいかもいしれません。

□ 食事

大学外ではほとんど食べなかったので、大学外の食事はよくわからないです。大学内での食事について書きます。清華大学には学食がいくつもありましたが、どれも料理の種類がすごく多くて、充実していました。しかも、値段も安かったです。中国で中華料理というと一品料理が多いですが、学食では大きいお皿にいろいろ頼んで少しずつ食べるというような形で食べている人が多かったです。学食とは別に大学の敷地内に、普通の中華料理屋のようなレストランもいくつもありました。中華料理が好きな人にはすごくいいです。ただ、中華料理ばかりというわけではなく、マクドナルドのようなファストフード店やカフェも校内にいろいろありました。

清華大学 P3110382

□ 中国語

大学の先生や学生は英語を話せる人が多いので問題ないですが、そうじゃない人は英語が通じない人が多かったです(大学の食堂や売店の人など)。例えば、食堂の店員に「メニュー」と言っても通じない等です(メニューなら菜単cai danで通じますが)。大学の人以外とやりとりするのなら、やっぱり少しは中国語を覚えておかないとスムーズにはいかないですね。私も中国はもう7回目でしたので、やっと少しは中国語を覚えました。




ERE(経済学検定試験)


経済学検定試験」というものがあります。ERE(Economics Record Examination)とも呼ばれます。名前の通り、経済学の検定試験で、経済学の知識・理解度を測るための試験です。

「ERE」は経済学の中の「ミクロ経済学」、「マクロ経済学」、「財政学」、「金融論」、「国際経済」、「統計学」の6つの分野が出題範囲となります。ただ、その中から「ミクロ経済学」、「マクロ経済学」の2つのみに限定した「EREミクロ・マクロ」という簡易版の試験もあります。通常のEREの受験者数は非常に少なく、ほとんどの受験生はこちらの簡易版のEREミクロ・マクロを受験しています。

例えば、2017年12月3日におこなわれた、第33回の試験では 「このファイル」 にあるように

  • EREの受験者: 68名
  • EREミクロ・マクロの受験者: 1261名

となっていて、ミクロ・マクロが全体の95%を占めています。ですから、EREミクロ・マクロがむしろメインの試験と言ってよいと思います。

なぜ ERE の話をするのかというと、ERE の成績優秀者についておもしろい点があるからです。

http://www.ere.or.jp/results/achiever.html

上のページにEREの試験における成績優秀者が掲載されています。例えば、2017年12月3日におこなわれた第33回の試験の結果、特に、受験者のほとんどを占めているEREミクロ・マクロの方の成績優秀者を見てください。

名前が非公開である人を除くと成績上位の40名が掲載されていますが、名前から判断するに40名中35名(87.5%)が中国人です。

これは第33回の話ではなく、最近のEREミクロ・マクロでずっとこの傾向があるようです。5年くらい前から中国人が増え始め、最近ではずっと中国人が上位を占めるようになっています。

日本人が作成して、日本でおこなっている経済学の検定試験にもかかわらず、それで上位の成績をとっているのはほとんど中国人だということです。なぜこういう状況になっているのでしょうか? これは単なる推測ですが、多くの中国人が日本の大学院受験のためにこのEREを受けているのではないかと思います。

経済学の大学院ではこのEREの試験を入試の代わりに利用しているところがかなりあります(EREの試験を受けていると筆記試験が免除される仕組み)。そのような大学院を受験するために中国人がこのEREを受験しているのだと思います。しかも、いい大学院に合格するためにかなり勉強しているので、いい成績をとっているのだと思います。

別に中国人が成績の上位を占めることが悪いことではないですが、おそらくERE を作成・提供している人はこういうような状況になるとは考えていなかっただろうなとは思います。

それと、EREミクロ・マクロではなく、6分野が範囲の ERE については一回の試験の受験者が100名もいません。第33回はたった68名ですし、第32回が58名ですから年間たった120名です。年間の受験者が120名しかいないというのは資格試験としての人気がほとんどゼロのようなものです...そもそもこれでは問題作成の費用で赤字になってしまっているかもしれないですね。

ちなみに他の経済に関するような資格試験の受験者を調べてみると以下のような状況です。

  • 中小企業診断士の一次試験の受験者数は2017年:16,681人
  • 日商簿記の2級の2017年の実受験者数(3回の試験の合計):151,922人
  • 販売士2級の2017年の実受験者数(2回の試験の合計):11,156人
  • FP技能検定2級2017年の実受験者数(3回の試験の合計):58,635人

なぜ唐突にEREのことを話題にしたかと言うと、よく受験生から経済学部に進学するとどんな資格がとれるのかというような質問をもらうからです。経済学に関する資格というと、このEREがまずあるのですが、あまり薦められるような資格とは言えないので、どんな資格をとれるかと聞かれたときに困ってしまいます。




(物価)指数の理論


今、CGE分析での指数(物価指数、数量指数)の扱い方について調べています。それで経済学の指数の分野の文献をいろいろ見てるのですが、経済学で指数というとやはり「物価指数」が特に重要な分野になるようなので、物価指数の計算という観点からの文献が多いです。

英語まで含めればすごく沢山の文献があります。代表的なものは ILO による CPI のマニュアルだそうです。→ “Consumer price index manual: Theory and practice”。これは物価指数についての包括的な解説書です(500ページ以上もあります)。

一方、日本語に限ると文献はそれほど多くはないようです。ちょうど今、『経済セミナー』で、一橋大学の阿部修人先生が「指数理論への招待」という連載を書いています。これはやはり物価指数に主眼を置いた内容になっていて、私が必要な内容(CGE分析で利用するもの)よりももっとレベルが広く・高い内容になっていますが、一応、exact指数、最良指数などの概念は理解しておきたいので、今後そこらへんについてわかりやすい解説をしてくれるといいなと思います。ただ、第3回目にして結構難しいです...

物価指数というのは物価の変動自体を測るために利用されることが多いと思いますが、CGE分析では物価の変動自体を測るためではなく、その物価指数を利用して名目値(金額、価格)をデフレートして実質値を求めるために利用することが普通です。なぜ、物価指数の理論のようなものが必要になるかと言えば、CGE分析では多数の財が存在する状況を扱うため、その多数の財の価格から物価全体を表す指数を作成する必要があるからです(もちろんある一つの財の価格だけをデフレータとして利用することもできますが、それは明らかに望ましくないですよね)。

CGE分析において、どういう方法によって実質値(例えば、実質GDP、実質所得)を求めるかは(それで計算結果の数値が大きく変わりうるものですから)非常に重要なポイントだと思いますが、意外なことに、これについてまとまった解説書のようなものはありませんし、そもそもこれについての議論自体があまりないです。というか、みんな好き勝手な方法で実質値を求めているというような状況だと思います。それで、とりあえずこれについてまとめてみようと思って今書いているところです。


アジアにおける温暖化対策についての上海でのワークショップ


昨年(2017年)9月に、Harvard Project on Climate Agreementsが上海で開催したワークショップに参加しましたが、そのワークショップの内容等をまとめた冊子が作成されました。

International Cooperation in East Asia to Address Climate Changeというページに置いてあります。短いですが、その中の一つの章を早稲田大学の有村先生と書いています。


Takeda, Shiro and Arimura, Toshi. H. (2018) “International Cooperation on Climate Policy from the Japanese Perspective,” Robert N. Stavins and Robert C. Stowe (eds) International Cooperation in East Asia to Address Climate Change, Harvard Project on Climate Agreements, February 2018.

論文というよりは、国際間の排出量取引制度に関する短い論評のようなものです。

ワークショップには中国、韓国、日本、欧米と様々な地域からの参加者がいましたので、その方たちの書いたものも含まれています。アジアにおける温暖化対策の動向などを知りたい人には参考になると思います。