国際間の排出量取引の論文のシミュレーションのプログラム


「ここのページ」 で紹介した、国際間の排出量取引を分析した論文で使っているシミュレーションのプログラムを以下のページで公開しました。 関心のある方は見てみてください。

http://shirotakeda.org/en/research/cge-iet.html

プログラムはGAMSで記述されています。ファイルを細かく分けてあるので、少し読みにくいですが、モデル自体はGTAPデータベースに基づく比較的単純な多地域モデルです。

カーボンプライシングと二重の配当についての記事


週刊東洋経済に早稲田大学の有村俊秀先生と「カーボンプライシング(炭素価格政策)」についての記事を書かせてもらいました。以下のページの記事です。

脱炭素社会への切り札、カーボンプライシング
有村 俊秀:早稲田大学政治経済学術院教授 / 武田 史郎:京都産業大学経済学部教授 週刊東洋経済、2019年8月3日号

カーボンプライシングと環境税制改革による二重の配当について書いたものです。


炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングでは、政府に新たな収入が生じる場合が多いです。その新たな収入によって、既存の税、例えば、所得税、法人税、消費税等を減税するという政策が考えられます。排出規制とともに、既存の税の減税をおこなうことで、環境の改善(CO2排出量の削減)とともに経済効率の改善が実現することを「二重の配当」という言います。二重の配当について詳しくは、以下の事典の中の私が執筆した「二重の配当」という項目で説明していますので、できればそれを見ていただきたいです。

環境経済・政策学会編(2018)『環境経済・政策学事典』,丸善出版(このページのページで紹介した本)

カーボンプライシングと二重の配当については、昨年、有村俊秀先生、尾沼広基さんと共著で、『環境経済・政策研究』にも論文を書きました。サーベイ(展望)論文です。

有村 俊秀, 武田 史郎, 尾沼 広基(2018)「環境論壇 炭素価格の二重の配当 -環境と経済の同時解決に向けて-」,『環境経済・政策研究』,11巻,2号,p73-78, https://doi.org/10.14927/reeps.11.2_73

この論文は二重の配当仮説についての既存研究についてまとめたサーベイ論文です。二重の配当の考え方自体はかなり前からあるもので、これまでもシミュレーション分析(CGEモデルによる事前的な分析)は数多くおこなわれていましたが、各国で実際に炭素価格政策(炭素税や排出量取引)が導入されるようになり、事後的な実証的な研究(計量経済学的な分析)も増えてきました。この論文はそういった新しい事後的な研究についても紹介しています。

大阪大学名誉教授の伴金美先生


もうかなり時間がたってしまいましたが、大阪大学名誉教授の伴金美先生が2018年12月にお亡くなりになりました。

私は研究において伴先生にいろいろお世話になりました。その縁もあり、環境経済・政策学会のニュースレターで伴先生の追悼文を書かせていただきました。

『環境経済・政策学会 ニュースレターNo.40』,2019年3月31日発行
http://www.seeps.org/pdf/newsletter/SEEPS_NL40.pdf

経済学者でしたら多くの方が伴先生のことはご存じだとは思いますが、私が伴先生に最初にお目にかかった2000年くらいからのことを書いていますので、読んでいただければ幸いです。

国際間の排出量取引についての論文


早稲田大学の有村先生、山形大学の杉野先生と共同で執筆していた国際間の排出量取引についての以下の論文が「Envrionmental and Resource Economics」に掲載されました。

Takeda, Shiro, Arimura, Toshi H. and Sugino, Makoto (2019) "Labor Market Distortions and Welfare-Decreasing International Emissions Trading." Environmental and Resource Economics, DOI: 10.1007/s10640-018-00317-4

オープン・アクセスにしてもらっているので、誰でも読めます(DOIをクリックしてください)。この論文の内容を簡単に紹介したいと思います。

分析の目的

温暖化対策には様々な政策手段がありますが、その中でも「排出量取引」が望ましい政策だと考えられるようになっています。この論文は「国際間の排出量取引(International Emissions Trading、以下IET)の効果を応用一般均衡モデルによるシミュレーションで分析した研究」です。

IETは望ましい政策と言われるのは、以下のようなことを実現すると考えられているからです。

  • 国際間で排出枠を取引することで、世界全体での削減費用を小さくすることができる。
  • 取引に参加する国、全てに利益がもたらされる。

しかし、この議論は排出枠の市場しか考慮していないという問題があります。言い換えると、部分均衡的な分析から導かれた主張です。

排出枠の市場以外の市場、例えば、財の市場、生産要素の市場等も想定し、政策が財や生産要素の市場に与える影響までを考慮した場合、つまり一般均衡モデルで分析した場合には、IETは必ずしも参加国に利益をもたらすとは限らなくなります。これは既に多くの研究によって指摘されていることです。

我々の研究では労動市場に歪みがある状況で、IETが参加国に利益をもたらすかどうかを分析しています。そのために、以下のような4つのモデルで比較をおこなっています。

  • モデル1) 労働市場に歪みがないモデル
  • モデル2) 労動供給が可変で、かつ労動課税が存在するモデル
  • モデル3) 賃金が下がらないモデル(最低賃金が存在するモデル)
  • モデル4) 賃金が下方硬直的なモデル(wage curveモデル)

モデル1では労動供給を外生的に設定し、賃金が伸縮的と仮定しています。モデル2では余暇・労動供給の選択を組込み、かつ労動課税を導入しています。労動課税により、労動供給が過少な水準に抑制されているという歪みが存在します。モデル3と4では賃金に下方硬直性が存在することになるので、その結果(非自発的)失業という歪みが生じます。モデル1とモデル2〜4を比較することで、労動市場の歪みがもたらす効果を分析しています。

分析はCGEモデルによるシミュレーションでおこなっています。モデルにはGTAPデータを基準データにした 8 地域、16部門のグローバル、かつ静学的なCGEモデルを用いています。

分析の主な結果

シミュレーション分析から以下のような結果が出ました。

  1. まず、労動市場に歪みがないモデル(モデル1)ではIETをおこなうことで全ての参加国が利益を得 る
  2. 第二に、労動市場に歪みのあるモデルであっても、排出枠の輸入国になる国はIETに参加することで常に利益を得る
  3. 労動市場に歪みがあるモデルでは、排出枠の輸出国になる国はIETに参加することで損失を得る場合がある。
  4. 特に、最低賃金モデル(モデル3)とWage curveモデル(モデル4)では輸出国がIETへの参加によって損失を被る可能性が高い。
  5. 上の結果はどの国かによっても変わってくる。例えば、ロシアや中国はどちらも排出枠の輸出国になる可能性が高いが、中国がIETから損失を被るケースが多いのに対し、ロシアは損失を被るというケースが非常に少ない。

排出枠の輸出国になる国が損失を被ることになる理由は、ちょっとややこしいので、論文を読んでください。

これまでも様々なケースでIETが必ずしも参加国に利益をもたらすわけではないということは示されていましたが、我々の研究は労動市場に歪みがあるケースでも同様のことが言えるということを明らかにしています。

最初に述べたようにIET(国際間での排出量取引)は参加国に利益をもたらす政策と(少なくとも経済学者には)主張されることが多いのですが、実際にはそう単純ではなく、どのような効果が生じるかを慎重に検討しておこなうべきものだと言えると思います。

CGE分析、特に温暖化対策のCGE分析では非自発的失業を考慮しない、つまり労動市場は常に均衡するという想定で分析をするものがほとんどなのですが、本研究では非自発的失業が存在するモデルも利用しています。CGEモデルとしてもちょっと珍しいモデルを利用しているという点もおもしろいのではないかと個人的には思っています。

jecon.bstの少し重要な変更


以前の「この記事」でBibTeX用のデータベースファイルであるbibファイルでは通常、日本語の文献の場合、英語の文献とは著者名の書き方が違うということを説明しました。具体的には英語文献と日本語文献では著者名の姓名の順序が違うということでした。

しかし、日本語文献であっても、英語文献と同じ順序を使っているbibデータが増えてきました。そこで、jecon.bstではそのようなデータでも正常に扱えるような機能を加えていました。ただし、デフォールトの設定では昔からの記述法を前提としていました。

jecon.bstのversion 5.5より、この設定を変更し、日本語文献でも英語文献と同じ姓名の順序にするというのをデフォールトの設定としました。

昔からの普通のbibファイルを利用したいという人はbst.sei.mei.orderという関数に#0を設定するように自分で修正してください。

これからは、BibTeX 用のデータベースを作成するときには、日本語文献であっても英語文献と同様の著者の書き方をするのが普通のルールとなって欲しいと思います。ただ、そうして作成されたデータベースを jplain.bst などの基本的なbstファイルでは扱えないのですが...

certified random orderによる著者名の並べ方


AER(American Economic Review)という雑誌に掲載された以下の「Ray ⓡ Robson (2018)」という論文の内容についての話です(著者名の区切に「ⓡ」という記号を使っている理由はあとで説明します)。

Ray, Debraj ⓡ Arthur Robson (2018) "Certified Random: A New Order for Coauthorship," American Economic Review, Vol. 108, No. 2, pp. 489–520, DOI: 10.1257/aer.20161492.

論文等を共著で書いたときには、著者名をどういう順番で並べるかを選ぶ必要があります。分野によっても変わってくるかと思いますが、よく使われる方法には、1) 論文の執筆における貢献の大きさ順で並べるという方法、2) アルファベット順で並べるという方法(今は話を英語の論文に限定しています)があると思います。

アルファベット順

論文の執筆の貢献度が著者の間でかなり違う場合には貢献度順が使われることが多いのでしょうが、貢献度が同じような場合にはアルファベット順が多いかもしれません。実際、経済学ではアルファベット順の利用がかなり多いようです。ただ、アルファベット順には大きな欠点があります。それはたまたまアルファベットの若い名前を持つ人を大きく優遇することになるという点です。

実際にどれくらい優遇することになるかはRay ⓡ Robson (2018)でも説明されています。Ray ⓡ Robson (2018)では以下の論文が紹介されています。

Einav, Liran, and Leeat Yariv. (2006) "What's in a Surname? The Effects of Surname Initials on Academic Success." Journal of Economic Perspectives, 20 (1), pp.175–88, DOI: 10.1257/089533006776526085.

このEinav and Yariv (2006)は、米国のトップ35の経済学部の教員を対象に、名前と業績の関係について調査、分析したものだそうです。分析の結果、若いアルファベットの姓を持つ教員ほどトップ10の経済学部におけるテニュアを得る可能性が優位に高く、クラークメダルとノーベル賞を受賞する確率も高いということがわかったそうです(これは、出身国、人種、宗教、学部等の要素をコントロールした上で導かれた結果です)。他にも証拠となるようなデータがあるようです(詳しくはRay ⓡ Robson (2018)を見てください)。

[注]ただし、上記の研究に反論するような研究もあります。例えば、以下 の論文は、アルファベット順による第一著者優遇の効果は従来言われているほどには大き くはないという結果を導いています。

Ong, D., Chan, H. F., Torgler, B., and Yang, Y. (2018). "Collaboration incentives: Endogenous selection into single and coauthorships by surname initial in economics and management." Journal of Economic Behavior and Organization, 147, pp.41–57. 10.1016/j.jebo.2018.01.001

ランダム順

アルファベット順では名前によって有利、不利が生じてしまうということなので、それではランダムに順番を決めてやればいいのではとなります。例えば、Abeさん、koizumiさんという2人がよく共同論文を書いていて、論文を書くたびにサイコロを振って著者名の順序を決めたとすると、Abeさんが特に優遇されるというようなことはなくなりそうです。

しかし、ランダムな並べ方には一つ問題があります。それは、仮にランダムに決めた結果として「Koizumi and Abe」という順番になったときでも、それをKoizumiさんが論文の執筆において大きい貢献をしたために第一著者になっているとみなしてしまう人が出てくるという点です。そうなると逆にKoizumiさんを優遇することになってしまいそうです。

最初に述べたように、並べ方としては貢献順という方法もよく使われています。著者自身はランダムに並べた結果「Koizumi and Abe」としている場合であっても、第三者からはそれがランダム順なのか、貢献順なのかが判断できません。

Certified random order(保証されたランダム順)

以上のように単純なランダム順では問題があるということで、Ray ⓡ Robson (2018)で提案されているのが「certified random order」というランダム順です。単純なランダムと何が違うかというと、ランダムで著者順を決めているということがわかるように特別な記号(区切)を利用するということです。上の例で言えば、「Koizumi and Abe」ではなく、「Koizumi ⓡ Abe」というように表現するということです。

単に「Koizumi and Abe」なら、Koizumiさんが貢献度が大きいのかと思う人がでてきますが、「Koizumi ⓡ Abe」のようにこれは「ランダム順」ということを示す記号を用いれば、貢献順と誤解されることはなくなり、本当の意味でのランダム順ということを明示することができます。

「論文の著者が保証(certify)したランダム(これはランダムに決めた並び順と著者によって保証されている)」ということで「certified random order」という呼び方を使っているようです。ランダムということを表す記号としてはどういうものでもよいようですのですが、Ray ⓡ Robson (2018)では「®」を使っています。ただ、これは既に商標のマークとして使われていますので、Ray は代わりに「ⓡ」を提案しています。そのため、この文章でも「ⓡ」を使っています。ただし、ⓡを使うべきといういわけではなく、別のものでもよいと思います(できるだけ統一していた方がわかりやすいですが)。とりあえず考え方を説明するだけでしたら、「and」で区切るのでなければ何でもいいかと思います。

「certified random order」という方法はいろいろ良い性質を持つようです。それをRay ⓡ Robson (2018)で長々と証明をしています(私にはよくわからないので、詳しくは論文を見てください)。

一つ誤解を招きやすい点ですが、randomに並べるというのは、引用するたびにランダムに著者名を並べ替えるということではないです。元々、著者達が決めた並び順で常に引用するのですが、その元の並び順を著者は(貢献順等ではなく)ランダムな方法で決めましたよということです。一度、著者が決めた並び順は固定されます。

certified random orderの実装

なぜ certified random order の話をしたのかというと、certified random orderをBibTeX で実現できないかと Raraj Ray と Martin Osborneに聞かれたからです(Raraj Rayは上記の論文の著者であり、Martin Osborneは有名なゲーム理論のテキストの著者ですね)。それほど難しいことではなかったので、https://github.com/ShiroTakeda/econ-bstというページで開発している econ.bst というBibTeXのスタイルファイルで certified random orderを使えるようにしました。

Certified random orderを使う方法ですが(詳しくはecon.bstのマニュアルを読んでもらいたいのですが)、データベース(bibファイル)でcertified random orderを使っていることを指定するという方法にしています。具体的には、certified random orderを利用している文献については、「nameorder」というフィールドに「random」という値を 設定するという方法をとっています。例えば、以下のような指定をします。

@techreport{NBERw25205,
  title        = {Electoral Systems and Inequalities in Government
                  Interventions},
  author       = {Garance Genicot and Laurent Bouton and Micael Castanheira},
  institution  = {National Bureau of Economic Research},
  type         = {Working Paper},
  series       = {Working Paper Series},
  number       = 25205,
  year         = 2018,
  month        = {October},
  doi          = {10.3386/w25205},
  URL          = {http://www.nber.org/papers/w25205},
  nameorder    = {random}
}

このように指定された文献を引用すると、参考文献部分で

Genicot, Garance ⓡ Laurent Bouton ⓡ Micael Castanheira (2018) "Electoral Systems and In- equalities in Government Interventions," Working Paper 25205, National Bureau of Economic Research, URL: http://www.nber.org/papers/w25205, DOI: 10.3386/w25205.

というような表記になり、さらに引用部分では「Genicot ⓡ Bouton ⓡ Castanheira (2018)」、あるいは「Genicot ⓡ al.(2018)」という形になります。後者のような省略形の場合、「et」の代わりに「ⓡ」を使っています(etはラテン語でandの意味なので)。「author」フィールドの指定は通常の方法と変わりません。

certified random orderの今後

このcertified random orderという表記の方法が今後普及するかどうかはわかりません。ただ、普及させるには文献データベース側での対応が必要になると思います。具体的には、文献のデータベース側でその論文の著者名の並び方がcertified random orderなのかどうかを示す情報を持つようにしないといけないと思います。例えば、私がecon.bstで実装したように、bibファイルにおいてnameorderというフィールドにrandomという値を持たせるというようにです。

現在、ネット(例えば、Google scholarやIDEAS)などでBibTeX形式の文献情報を得ることができますが、それらのデータベースの論文においてcertified random orderが使われているのかどうかという情報は含まれていません。例えば、「これ」はGoogle Scholarから取得できる「Ray ⓡ Robson (2018)」のBibTeX形式の文献情報ですが、certified random orderを使っているという情報は全く含まれていません。情報がなければ引用する際にcertified random orderの表記を使うべきかどうかもそもそもわかりません。まずは引用する側がその文献がcertified random orderを使っているかを簡単に判断できるようにデータベース側が対応する必要があると思います。

以上、certified random orderについて説明しましたが、普段、アルファベット順で著者名を並べているという人、その中でも特に姓のアルファベットが後ろの方なのでいつも第一著者にはなれていないという人は「certified random order」を使うように共著者に提案してみるといいかもしれません。有名な研究者が使うようになれば、多くの人が使うようになるかもしれないですね。私自身はたぶん使う機会がなさそうです...というのは、私は元々アルファベット順で著者名を並べることがほとんどないもので。

econ.bstのCTANへの追加


「この場所」でecon.bstというBibTeXのスタイルファイルを作成・配布しています。これは主に経済学のジャーナル向けのスタイルです。ただし、特定のジャーナル向けというわけではなく、自分で簡単にカスタマイズできるということを特徴にしています。このecon.bstをCTANに追加してもらいました。

https://ctan.org/pkg/econ-bst

これでecon.bstはTeX Liveの中にも追加されることになりますので、TeX Liveを使っている人でしたら自分でインストールしなくても利用できるようになります。

上述のように、econ.bstは元々特定のジャーナル用のものではなく、自分でBibTeXのスタイルをカスタマイズしたい人向けのものです。そのままのbstファイルとして利用するのではなく、自分で書き換えて利用することを前提としています。ですので、TeXの標準的なディストリビューションに含むのではなく、自分でダウンロードして(さらに、自分で書き換えて)利用するという形がいいのではないかと思っていました。ですが、普通のTeXのシステムで最初から利用できるようにして欲しいという要望がありましたので、今回CTAN に追加することにしました。

また、CTANへの追加とは別なのですが、econ.bstで「certified random order」という著者名の表記方法ができるようにしました。これについては別のポスト(「certified random orderによる著者名の並べ方」)で説明したいと思います。

日本語文献も扱える jecon.bst というスタイルファイルも作成していますが、これについては今のところCTANへは追加していないです。こちらも自分でカスタマイズして使うものなので、自分でインストールして使うのでいいかと思いますが、econ.bstと同様にCTANに追加してもらうことも考えています。

『環境経済・政策学事典』


丸善出版から『環境経済・政策学事典』という書籍が出版されました。環境経済・政策学会が編集者としてまとめた環境経済学、環境政策に関する事典です。


一つの項目について、2ページから4ページで解説するというスタイルです。あるトピックについて、基本的な概念などを説明するとともに、参考文献や今後の研究課題も含めた形で最新の研究の動向も解説していますから、環境経済学・政策学の何らかのトピックについて学びたいという場合に非常に役に立つ事典になっているかと思います。

私自身も「二重の配当」、「カーボンリーケージ」という二つの項目について担当しています。

書籍としてはかなり高いので誰でも気軽に購入できるものではないですが、研究者でしたら高い値段に見合う価値はあると思いますし、大学の図書館には入るでしょうから購入しないにしても環境経済学について何か勉強するときにはまず見てみるといいと思います。

Windowsでのゴシックフォントと明朝フォントの区別


前からずっと思っていたことですが、WindowsでMS Word(マイクロソフト・ワード)を使っているとき明朝フォントとゴシックフォントが画面上ではすごく区別しにくいです。特に、「MS明朝」と「MSゴシック」は区別がつきにくいです。

↓の画像はMS Wordで書いている文書をキャプチャしたものです。上側は「MS明朝+MSゴシック」で書いたもの、下側は「游明朝+游ゴシック Medium」で書いたものです。

上側の「MS明朝+MSゴシック」で記述したものの場合、明朝フォントとゴシックフォントの区別がしにくく、どの部分にゴシック体を利用しているかが非常にわかりにくいと思います。

このWordファイルをPDFファイルへ出力し、それをAdobe Readerで表示したものをキャプチャしたものが↓の画像です。

これを見ればわかるようにPDFに直した後ならMS明朝とMSゴシックは簡単に区別できるようになります。また、Wordの文書を紙に印刷したあとも同じように二つのフォントの区別は簡単です。区別しにくいのはWordで書いている際に、それを画面上で見るときです。


私はよく授業で学生にレポートやレジュメをWordで作成させますが、学生が作成した文書では本来明朝体で書くべきような部分(見出しなどではない普通の文など)にゴシック体を利用していることが非常によくあります。一つの理由は学生がフォントの使い分けにしっかり注意を払っていないということだと思います。そもそもレポートの本文を全部ゴシック体で書くのは不適切ということを知らない学生もいますし。ただそれだけではなく、上で述べた「画面上でMS明朝、MSゴシックの区別が付きにくい」ということも大きな原因になっていると思います。というのは、学生も印刷した場合には何かおかしいフォントを使っているということに気付くからです。

印刷すれば確認しやすくなりますから、印刷するというのも一つの対処方法ですが、フォントのチェックのためだけに印刷するのも面倒ですし、紙ももったいないですし、今はレポートやレジュメもオンラインでファイルで提出ということも多いですので、やはり印刷せずに画面上だけで簡単に確認できると便利です。この部分を改善してもらいたいとずっと思っているのですが、Windowsではかなり前からMS明朝フォント、MSゴシックフォントが使われているにもかかわらず、ずっと同じままなので今後も変わらない気がします。


「MS明朝フォント」、「MSゴシックフォント」の組み合わせでは判別しにくいということなので、異なったフォントを利用するという対処方法もあります。最近のWindowsではMS明朝、MSゴシックに加えて、游明朝、游ゴシックというフォントも標準的に含まれるようになりました。上の画像には「游明朝+游ゴシック」という組み合せを利用した場合も含まれていますが、「游明朝+游ゴシック」の方は「MS明朝+MSゴシック」よりも画面上でも若干区別がつきやすいと思います。

ただ、「游明朝+游ゴシック」の組み合わせは、PDFファイルにしたり、印刷した場合には逆に区別しにくくなるようです...


フォントの見た目は個々人の好みに大きく依存することなので、フォントがどうあるべきかということに単純な解はないと思います。ただ、上で説明したように、明朝体を使うべき部分にゴシック体を誤って利用しているケースが非常によく見られますから(すくなくとも私の学生では)、もう少し画面上で両者を区別しやすくしてくれるとありがたいです。

GAMS Studio


2018年4月11日に GAMS の 25.1.0 の Betaバージョンがリリースされました。

https://www.gams.com/beta/

その 25.1.0 Beta から「GAMS Studio」というIDE(統合開発環境)が提供されるようになりました。GAMS Studioの詳しい説明は「こちらのページ」にあります。



これまでのGAMSにも「GAMS IDE」というIDEが付属していましたが、機能が非常に貧弱で他のプログラミング言語用のIDEに比べてかなり不便なものでした。

このリリースから新しい IDE である「GAMS Studio」が提供されるようになりました。GAMS Studioは昨年から開発が始まったもので、まだ開発途中のものなので、いろいろ不完全な部分も現時点ではあります。ですので、快適に利用できるという水準にはまだ達していないのですが、既にGAMS IDEより便利になっている部分もあります。今後、だんだん開発が進むと思うので、将来的にはかなり期待できそうです。

GAMS StudioはGitHub上(https://github.com/GAMS-dev/studio)でソースコードが公開されていますので、自分で修正したり、開発に参加したりすることも可能のようです。

以前にGMS-ManagerというGAMS用のIDEを紹介しましたが、あれはGAMS本体に付属の公式のものではなく、外部の人が作成しているものです。現時点ではGMS-Managerの方が完成度が高く、便利だと思いますが、GAMS StudioはGAMSに付属しているもの(一方、GMS-Managerは有料)ですし、開発がどんどん進めば同じような水準のものになるかもしれません。それぞれ一長一短がありどちらがよいとは言えませんが、とりあえず選択肢が広がるのはユーザーにはいいことだと思います。

GAMS Studioを紹介しましたが、私自身はEmacsというエディターでGAMSのコードを書い(たり、実行したりし)ています。EmacsがGAMSを使うためのマクロを自分自身で作成しています。「GAMS mode for Emacs」というものです。

Emacs のプログラム編集の機能はやはりすごく充実していますし、もう20年も利用しているエディターですので、私自身は当分 Emacs で GAMS を使うことになると思います。