『地球温暖化対策と国際貿易』


いろいろ(2012-05-23)で書きましたが、私も執筆者として参加した書籍が出版されました。早稲田大学の有村俊秀先生、上智大学の蓬田守弘先生、川瀬剛志先生編集の以下の本です。

有村俊秀・蓬田守弘・川瀬剛志(編)、2012年、『地球温暖化対策と国際貿易:排出量取引と国境調整措置をめぐる経済学・法学的分析』、東京大学出版会

現在、地球温暖化対策として日本でも排出量取引の採用が議論されていますが、なかなか導入が進みません。その一つの理由として、排出量取引等の温暖化対策により、日本のエネルギー集約産業が国際競争において不利な立場に追いやられる可能性が高いという問題が指摘されています。また、そのような競争力に関する影響を通じて、生産活動が海外に移転し、その結果海外からのCO2排出量が増加してしまうという、いわゆる「炭素リーケージ」問題も指摘されています。

本書は、以上のような温暖化対策による国際競争力、炭素リーケージという問題を経済学、法学の視点から分析・検討したものです(詳しい目次)。私は、第1部の「国内排出量取引とリーケージ・国際競争力問題対策」の

  • 第1章:「応用一般均衡モデルによる地球温暖化対策の分析:有用性と問題点」
  • 第3章:「排出量取引の制度設計による炭素リーケージ対策:排出枠配分方法の違いによる経済影響の比較」
  • 第4章:「日本の国境調整措置政策:炭素リーケージ防止と国際競争力保持への効果」
に関わっています。第3章は有村俊秀先生(早稲田大学政治経済学術院)爲近英恵さん(大阪大学経済学部)との共著、第4章は有村先生、堀江哲也さん(上智大学大学院地球環境学研究科)との共著です。

第1章は応用一般均衡分析(computable general equilibrium anlaysis、CGE分析)の特徴、そのメリット、デメリットなどについてまとめた章です。温暖化対策ではCGE分析がツールの一つとして幅広く利用されており、本書の第3章、第4章でも利用しています。ただ、日本語ではCGE分析という手法についてのまとまった文章がほとんどないこともあり、そもそもCGE分析がどのような分析手法で、どのようなメリット、デメリットがあるのかということがあまり理解されていないと思います。本章はCGE分析全般についての解説ということで書いています。「一般均衡分析」、「一般均衡モデル」などというと、なにか難しい印象を持つ人が多いかもしれませんが、要するに複数の市場を考慮して、経済全体を考えるというだけであって、難しい理論やらテクニックやらを使うわけではありません。

第3章、第4章は、そのCGE分析を実際に温暖化対策の分析に応用した研究です。第3章は排出量取引制度における排出枠の初期配分方法を分析した研究です。排出量取引制度の一つの論点として、排出枠(排出権)を最初にどのように配分するかということがあります。これには、オークション方式による配分に加え、様々な無償配分の方式があります。第3章では、様々な配分方式をとりあげ、配分方式によって、厚生、GDP、炭素リーケージ、産業の国際競争力への影響がどう変わってくるかを分析しています。特に、アメリカで提案されているOBA(output-based allocation)という「生産量に基づいた無償配分方式」を分析しているのが一つの特徴です。

第4章は、炭素リーケージ防止、産業の国際競争力維持の対策として提案されている国境調整措置をCGE分析によって検討した研究です。こちらについても、厚生、炭素リーケージ、産業の国際競争力等への影響という観点から様々な国境調整措置を比較しています。

分析として不十分な部分、改善すべき点も多々ありますが、温暖化対策の経済的影響を定量的に評価するよう分析はまだまだ日本では少ないですので、これまでにない研究と言えるのではないかと思います。

最後に、私の担当部分に対しては、環境経済学の研究者である青山学院大学の松本茂先生、京都大学の諸富徹先生にお忙しい中コメントをいただいています。どうもありがとうございました。



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