Reinhart & Rogoff論文


最近、知った話ですが、昨年、ハーバード大学の二人の経済学者(Carmen ReinhartとKenneth Rogoff)の書いた論文、書籍に間違いがあったということが話題になったそうです。どういう間違いがあったかは「ケネス・ロゴフ – Wikipedia」で説明されています(全然関係ない話ですが、大学院生のときこのRogoffとMaurice Obstfeldが書いたFoundations of International Macroeconomicsという電話帳なみのテキストで勉強しました。内容はもうきれいさっぱり忘れてしまいましたが)。

このReinhart-Rogoffの論文の件について、Daniel Lemireという計算機科学の専門家がブログで "Share your software early: the Reinhart-Rogoff case" という記事を書いています。要点だけ言うと、Reinhart-Rogoffの二人はデータだけではなく、計算に利用したスプレッドシート(excelのファイル)ももっと早く公開しておくべきだったというようなことを言っています。

Reinhart-Rogoff論文の問題について詳しいことはよくわからないのですが、やはりこの人が言うように、一般的にはデータとプログラムは公開するようにするべきだと思います。さらにそれだけではなく、経済学では

データやプログラム(計算方法)を公開していない分析を政策の根拠として利用してはいけない

というルールをつくるのが望ましいと思います。データやプログラムが公開されていなければ、分析の中身を第三者がチェックしようがないのですから、こんなこと当たり前だと思う人がいるでしょうが、経済学ではむしろ公開されている方が珍しいかもしれません。統計的手法を用いるような分析は専門外なのでよくわかりませんが、私の専門のシミュレーションの分野ではデータやプログラムが公開されていることはめったにないです。つまり、第三者によって分析の中身(データや計算方法等)をチェックされていない研究がたくさんあるということです。

経済学の論文誌に論文を書いたり、学会で発表しているだけなら、間違い(や捏造)があろうが、世の中にたいした害が生じるわけではないかもしれません(もちろん全く問題がないわけではないです。アメリカでも日本でも経済学の研究には税金からたくさんの資金が利用されていますから)。しかし、もし研究の結果が政策の決定の根拠として利用されるのなら、間違っていた場合のコストはとんでもなく大きくなる可能性があります。実際、Reinhart-Rogoffの研究結果を基に多くの国では緊縮財政政策が採用されることになったそうです。また、Reinhart-Rogoffの本はベストセラーになったそうで、日本語にも翻訳されています。

Amazon.co.jp:『国家は破綻する――金融危機の800年』のレビューを見ると、上で指摘された間違いが判明するまでは、非常に高い評価が付いています。多くの人がReinhert-Rogoffの研究を正しいものと信じてその考え方に賛同したのだと思います。おそらく日本でも財政赤字削減の根拠としてこの二人の研究を挙げた人が少なからずいたのだと思います(ただし、Reinhert & Rogoffの研究が間違っていたからといって、財政赤字を削減する必要はないということにはならないですが)

データやプログラムが公開されていないような研究とは、第三者が内容をチェックできない研究ということですので、捏造のような悪質な行為を見つけることはもちろん意図的ではない単純なミスさえチェックすることが難しいということです。実際、Reinhert-Rogoffの間違いの一部は単純なミスであったようですし。ミスを全くなくすことは難しいですが、第三者がチェックできればミスは見つかりやすくなると思います。政策決定の根拠として利用される研究に単純なミスが含まれることを防ぐためにも、データやプログラムの公開を求めることが望ましいと思います。



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