アジアにおける温暖化対策についての上海でのワークショップ


昨年(2017年)9月に、Harvard Project on Climate Agreementsが上海で開催したワークショップに参加しましたが、そのワークショップの内容等をまとめた冊子が作成されました。

International Cooperation in East Asia to Address Climate Changeというページに置いてあります。短いですが、その中の一つの章を早稲田大学の有村先生と書いています。


Takeda, Shiro and Arimura, Toshi. H. (2018) “International Cooperation on Climate Policy from the Japanese Perspective,” Robert N. Stavins and Robert C. Stowe (eds) International Cooperation in East Asia to Address Climate Change, Harvard Project on Climate Agreements, February 2018.

論文というよりは、国際間の排出量取引制度に関する短い論評のようなものです。

ワークショップには中国、韓国、日本、欧米と様々な地域からの参加者がいましたので、その方たちの書いたものも含まれています。アジアにおける温暖化対策の動向などを知りたい人には参考になると思います。



GMS-Managerというソフト


「GMS-Manager」 という GAMS のプログラムを書くための統合開発環境(IDE)がつくられたようです。https://www.gms-manager.com/ というサイトからダウンロードできます。

GAMS のプログラムを作成するための IDE としては、GAMS に付属の GAMS-IDE というソフトがありましたが、これは以下のような問題がありました。

  • Windows 用しかない。
  • IDE といっても、ほんとに基本的な機能しかなく、プログラム編集を補助するような機 能がほとんどなかった。

これに対して GMS-Manager は次のような特徴があるようです。

  • Mac、Linuxでも利用可能
  • コマンドや変数名の補完機能
  • プログラム内の変数などのリストを表示する機能
  • プログラム全体をカバーする検索機能
  • 詳細なエラーの表示機能
  • GDXファイルの閲覧・編集機能

他にもいろいろな機能があるようです。少なくとも GAMS-IDE を使うよりはずっとプログラムを書きやすくなると思います。

ただし、まだ日本語が入ったファイルを適切には表示できないようです。これはフォントが自由に選べないため、日本語フォントを使えないことが理由かもしれません。また、便利ですが、有料のソフトウェアです(2018年1月末までは無料で使えますが、それ以降は購入しないとデモモードでしか動作しないようです)。

まだちゃんとは利用していないので、詳しい使い勝手はよくわかりませんが、また感想をまとめたいと思います。


温暖化対策に関するシンポジウム


2017年12月15日(金)に、東京日本橋にある「早稲田大学WASEDA NEOホール」において、「パリ協定とカーボンプライシング-各国の政策動向と日本の長期削減目標に向けて-」という温暖化対策に関するシンポジウムが開催されます。誰でも申し込めば参加できるシンポジウムです。

私も参加し、「環境税制の改革:どうなる経済影響」というタイトルの発表をします。カーボンプライシング導入の際に同時に税制を改革することで、経済的な影響がどう変わるかを分析した研究(いわゆる二重の配当の分析についての研究)を紹介するような内容です。

シンポジウムのプログラムや参加の登録については「こちらのページ」をご覧ください。また、↓にパンフレットもありますので、ご覧ください。


パンフレット:「早稲田_カーホンフライシング・シンポジウム」


京都産業大学の写真(2017年11月)


Flickrにおいてある写真。外にあまり出かけないので、大学の写真、もしくは大学から見える景色の写真ばかりになってしまいました。同じ場所をとったものばかりです。

「京都産業大学の写真」


国境調整措置に関する論文のシミュレーションのプログラム


昔、温暖化対策の国境調整措置について以下のような論文を書きました。

  • Takeda, S., Tetsuya, H., & Arimura, T. H. (2012). A Computable General Equilibrium Analysis of Border Adjustments Under the Cap-and-Trade System: A Case Study of the Japanese Economy. Climate Change Economics, 03(01), http://dx.doi.org/10.1142/S2010007812500030.

この論文のシミュレーションはGAMSを利用しておこなっています。そのシミュレーションのプログラムをhttp://shirotakeda.org/en/research/cge_ba.htmlというページに置きました。

論文でもそれなりに詳しい説明をしていますが、論文だけではモデルやデータについて詳しくはわかりません。プログラムを読めば、モデル、データの詳細を把握し、どのようなシミュレーションをおこなっているのか深く理解することができます。


大学の猿と鹿


京都産業大学は山の斜面に建っていて、後ろは山です。


それもあって、動物がよく出てきます。

鹿。



猿。



他にもイノシシやリスを見たことがあります。


新しい GTAPinGAMS(GTAP9用)


もうリリースされてからかなり経つのですが、

LANZ, Bruno; RUTHERFORD, Thomas F. GTAPinGAMS: Multiregional and Small Open Economy Models. Journal of Global Economic Analysis, [S.l.], v. 1, n. 2, p. 1-77, dec. 2016. ISSN 2377-2999. Available at: https://jgea.org/resources/jgea/ojs/index.php/jgea/article/view/38. Date accessed: 21 may 2017. doi: http://dx.doi.org/10.21642/JGEA.010201AF.
という論文のページに新しい GTAPinGAMS が置いてあります。

GTAPinGAMS とは CGE 分析の研究者として著名な Wisconsin 大学の Thomas F. Rutherford 教授らが作成している GAMS 用のプログラムで

  • GTAP データを GAMS で利用するためのデータ変換・調整用のプログラム
  • シミュレーションのサンプルプログラム

の二つから構成されるものです。CGE 分析において GTAP データを利用するが、プログラムは GAMS で作成したいという人にとっては非常に便利なツールです。私もずっと昔から利用させてもらっています。

現在の最新の GTAP データは GTAP9 データで、GTAP9 データに対応した GTAPinGAMSは既に公開されていましたが、上のページに置いてある新しい GTAPinGAMS では修正と追加的なプログラムが加えられています。特に、「シミュレーションのサンプルプログラム」には二つの大きな改善が加えられています。

以前のサンプルプログラムでは、代表的家計の効用関数に CES 関数を仮定した多地域モデルしか提供されていなかったのですが(それだけでも有用なものでしたが)、新しい GTAPinGAMS では次のようにモデルの設定を選択できるようになっています。

  • 1) GTAPモデルのようなグローバル多地域(global multi-region)モデルに加えて、小国開放(small open economy)モデルも選択可能
  • 2) 消費者の需要の表現として、これまでの CES 型効用関数に加え、「LES(linear expenditure system)」、GTAPモデルで利用されている「CDE(constant difference)関数」も選択可能

まず、1) についてですが、これまでのモデルでは政策を導入したときに、その政策の直接的な効果に加えて、「交易条件効果」という間接的な効果も生じてしまい、どれだけが直接的な効果によるもので、どれだけが間接的な効果によるものかを判断することが難しかったのですが、小国の設定にしてシミュレーションをすることで交易条件効果を除外することができるので、直接的な効果がどれだけかを明かにできるようになっています。また、2) については、温暖化対策を分析する多地域 CGE モデルでは LES を仮定するものが多いですし、GTAP モデルでは CDE 関数を仮定していることから、著名なモデルと同じ設定を容易に試すことが可能になっています。どちらもシミュレーション分析をする際に非常に役に立つ修正だと思います。

他にも以前のバージョンからの細かい修正点として、データの変換・統合プログラムの修正があります。これまではデータを変換したり、統合したりするコードを実行するのに DOS のバッチファイル(その中で GAMS を呼出すプログラム)を実行するという形になっていましたが、新しい版では全て通常の gms ファイルを GAMS で実行するという形になっています。モデルは通常の MCP ソルバー用に書かれたものと、MPSGE 用に書かれたものの二つが提供されています。

説明書もプログラムもかなり長いので読むのが大変ですが、GAMSでGTAPデータを用いた多地域CGEモデルのシミュレーションをしたい人にはすごく役に立つものだと思います。


新しいシミュレーションの論文とそのプログラム


以下の論文を書きました。

武田史郎(2017)「排出量取引と自主的行動によるCO2削減の効果-応用一般均衡 モデルによる分析-」,『環境科学会誌』,30(2),pp.141-149
http://doi.org/10.11353/sesj.30.141

これは応用一般均衡モデルを用いて次の二つを分析した研究です。

  • 排出量取引によるCO2削減策において、排出量取引の対象部門を制限することの影響
  • 企業の自主的なCO2削減と排出量取引によるCO2削減の比較

短い論文ですので、もし興味がある方は直接論文を読んでいただきたいのですが、応用一般均衡分析で「企業の自主的な削減」を分析している研究はあまりないと思います。ただし、私のモデルの想定が「企業の自主的な削減」を適切に表せているか議論のあるところですが。


この論文のシミュレーションは GAMS を用いておこなっています。以下のページにシミュレーションのプログラムを置いています。

「排出量取引と自主的行動によるCO2削減の効果」

やはりプログラムを見たり、シミュレーションの出力結果を細かく分析しないと、シミュレーションが本当に適切に行なわれているのかどうかを判断することは難しいと思います。たいしたシミュレーションをしているわけではないですが、こういうことに興味がある人には少しは参考になると思います。シミューレションでどこかおかしいところがありましたら教えてください。

プログラムの一部(これはEmacs上でプログラムを開いている状況をhtmlファイルに出力したものです)


CGE 分析の特徴、利点、欠点


「応用一般均衡(CGE)分析の解説文書」というページで、CGE 分析(応用一般均衡分析)の解説をしています。これらの文書を読めば CGE モデルを作成して、CGE 分析をできるようになると思います。しかし、そもそも CGE 分析をおこなう利点、必要性については説明していないです。

いずれ、他の分析手法、モデルと比較しながら、

  • 1) CGE 分析の特徴
  • 2) CGE 分析の利点、欠点、問題点
等について包括的に説明する文書を書きたいと思っています。

しかし、動学モデルや多地域モデル等のトピックを説明した後の方が書きやすいので、実際に書くのにはまだ時間がかかりそうです。

一応、これまでにも 1)、2) のようなことについて書いたことはあります。例えば、以下の本や論文で書いています。

ただ、本や論文は字数に制限があったので内容を削らざるを得ず、詳しく説明できているとは言えないです。

そもそも CGE 分析の特徴、利点、欠点について把握しないで、CGE 分析の勉強をしてもあまり意味がありませんから、このテーマについていずれ詳しく書きたいと思っています。


応用一般均衡(CGE)分析の解説文書(2017-04-02)


「応用一般均衡(CGE)分析の解説文書」に Part 15 を追加しました。Part 14 までずっと仮想的なデータを用いたモデルでしたが、ここでやっと日本のデータを用いた CGE モデルを作成しています。

実際のデータを利用したモデルを作成する説明ができたということで、ここで一区切りにはなると思いますが、他にも追加したい内容がいっぱいありますのでまだ続きます。ただし、大学の新しい学期が始まって授業が忙しくなりますから、続きを書くのはまだちょっと先になると思いますが。