新しい書籍「Carbon Pricing in Japan」
私も二つの章を担当した「Carbon Pricing in Japan」という書籍が出版されました。
有村俊秀先生(早稲田大学)と松本茂先生(青山学院大学)のお二人が編集をされた本です。タイトル通り、日本における炭素税価格(温暖化対策)などについての研究をまとめたものです。
https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-15-6964-7
私が担当したのは次の二つの章です。
10章: Takeda S. (2021) The Competitiveness Issue of the Japanese Economy Under Carbon Pricing: A Computable General Equilibrium Analysis of 2050. In: Arimura T.H., Matsumoto S. (eds) Carbon Pricing in Japan. Economics, Law, and Institutions in Asia Pacific. Springer, Singapore. https://doi.org/10.1007/978-981-15-6964-7_10
13章: Asakawa K., Kimoto K., Takeda S., Arimura T.H. (2021) Double Dividend of the Carbon Tax in Japan: Can We Increase Public Support for Carbon Pricing?. In: Arimura T.H., Matsumoto S. (eds) Carbon Pricing in Japan. Economics, Law, and Institutions in Asia Pacific. Springer, Singapore. https://doi.org/10.1007/978-981-15-6964-7_13
一応、もう出版されたはずなのですが、なぜか年が2021年(?)になっています。
あまりないことだと思うのですが、本自体がオープンアクセスになっていますので、どの章もPDFファイルを無料でダウンロードできます(もちろん紙の本を購入することも可能ですが)。
以下、二つの章の研究を簡単に紹介したいと思います。
第10章の内容
第10章は、動学的なCGEモデルによって、CO2の排出規制が日本の経済に与える影響について分析したものです。
モデルには15地域、11部門、グローバルモデル、2011年から2050年までをカバーする逐次動学モデルを用いています。データはGTAP。このモデルで、日本を含めた先進国は2050年までに80%削減するというシナリオを前提とし、さらにその上で、1)途上国の削減について複数のシナリオ、2)国境調整措置についての複数のシナリオを想定して分析をおこなっています。
1のようなシナリオを分析するのは、途上国における排出規制の程度が日本に対してどういう影響をもたらすかを分析するためです。また、2は国境調整措置の有無がどのような影響をもたらすかを分析するためです。
分析の主な結果は以下の通りです。
- 途上国のCO2削減率の変化は日本にはあまり大きい影響を及ぼさない。
- 国境調整措置の有無は日本全体には小さい影響しかもたらさないが、一部の部門には大きい影響を与える。
第13章の内容
第13章はCGE分析で得られたシミュレーション結果を元に、1) 家計への影響、2) 企業への影響を分析した研究です。CGE分析と別の分析を組み合わせるという少し珍しいアプローチをとっています。
CGE分析ではどうしても国全体、産業全体、家計全体といったレベルの分析しかできないので、個々の企業や家計への影響というのは分析しにくいです。そこで、CGE分析から導かれた結果を使って、さらに詳細な影響を分析するということを試みています。